世界との対話
アーティストとの対話を通しての音作り、それが誇りです
私達のフルート製作に懸ける想いの根底にある精神、それは本当の意味での道具作りに徹する、ということです。より確かな道具を製作する為に、私達はフルートを愛する人々や、多くの音楽家との交流を通して、音楽表現とその方法についての理解を深める必要があると考えています。私達は、奏者の満足と信頼を得るためだけでなく、作り手の意識を伝えるためにも、フルーティストの皆様と対話したいと考えているのです。ぜひ、あなたの声を聞かせて下さい。そして、私達の声に耳を傾けてください。私達は、これからもより良い道具製作の為、多くのフルーティストと対話していきたいと願っています。




理想の音を実現する為に
素材の選択
往時の銀材を現代に甦らせたアルタスシルバーや、高純度銀材メタライズドシルバーなど、5種類の選択肢
アルタスでは、多くの素材や加工方法を使い分け、その結果生み出される様々な特色の音色を、奏者各々が持つ感性の多様性に対する選択の可能性として提供しています。
銀の含有量が92.5%のスターリングシルバー(Ag925)は、フルートの素材として最もスタンダードなものですが、アルタスでは他に、銀の含有量が95.8%のブリタニアシルバー(Ag958)、含有量99.7%のメタライズドシルバー(Ag997)、オールドフレンチフルートの音色を追い求め、様々な試行錯誤の末に生まれた94.6%のアルタスシルバー(Ag946)と、銀だけでも4種類の素材を採用しています。
総銀ではないスタンダードシリーズには、倍音の豊かなニッケルシルバー(洋白)を素材として選びました。
各素材は、密度や硬度、塑性変形時の展延性が異なるため、自ずとフルートの製作工程にも変化が生じます。
それぞれの素材に合わせた加工方法を適宜用いることにより、銀の含有量やその他の含有物に応じた様々な倍音構成を持った音色を、余すことなく引き出すことができます。
ALモデルでは、「巻き管」という、1枚の銀板を巻き端面を溶接したパイプを用いて管体を製作しています。
高温高圧下で金属塊から引き抜いて製作する、通常の継ぎ目のないパイプと比べて、巻き管製法はより多くの手間と熟練の技術が必要となりますが、巻き管で製作された楽器は独特の倍音構成を持ち、かつてこの製法で作られていたオールドフレンチフルートの音色を甦らせるためには、必要不可欠な製法です。
楽器は演奏することにより、金属加工時の残留応力が徐々に消失し、発する響きに対して分子配列等が理想的な形に変化していきます。
奏者自身が、フルートを、加工された金属から楽器へと成長させていく、我々はその可能性を広げる一助となるべく、日々研鑽を積んでいます。
新しいアルタススケール 巨匠から、最後の贈り物
理想的な倍音で自然に演奏できる独自のスケールが、奏者の要求に応える
2022年5月11日、不世出の偉大なフルーティストであり、音楽家であるウィリアム・ベネット氏が逝去されました。
世界に大いなる足跡を残したベネット氏は、亡くなる直前まで音楽に、そして道具としてのフルートの改良に情熱を傾け、自身の理想とするスケールを追求し続けました。
アルタスフルート創業者である田中修一との共同研究により開発された従来のスケールを、より理想に近づけるべく昇華させた新しいアルタススケール。
氏の遺志を引き継いだ田中が完成させた新しいスケールは、管体長の他、音孔径、位置が改良され、理想に限りなく近い倍音構成を持った、これまでのものとは一線を画す非常に高い完成度のスケールへと至りました。
そのスケールへのこだわりの結果、アルタスではCisの音孔のみ全てのモデルでハンダ付けとしました。
Cisの音孔は、本来のCisの音を出すことの他に、ベントホールとしてなど複数の役割を担っており、ベーム式フルートにおける大変重要な音孔です。
ハンダ付けの音孔にすることによって、必要な高さを確保し理想のスケールに近づけています。
頭部管のセッティングは、気温が摂氏21℃~23℃の環境下で5mm抜いた状態を基準として設計しています。
キイメカニズム
精密なつくりと、滑らかなキイアクションを両立
フルートのキイメカニズムは、芯金とそれを軸に回転するキイ、そしてそれらを支えるポストによって構成されています。
パーツ間のクリアランスが小さく、精密な設計の場合、パーツ同士の接触面積が大きくなり、キイアクションにおいて、少なからずフリクションロスを生じさせます。
アルタスフルートは、最もストレスのかかる右手主鍵と左手主鍵との間にあるポストに、砲弾型のテーパーのついた凸部分と、円錐形の凹部分を組み合わせる形状を採用しました。
この形状を採ることにより、パーツの接触部分が面から点になり、精密なつくりと、滑らかなキイアクションの両立を実現しました。
通常は高価格帯の楽器にのみ採用され、調整にも熟練の技術を要する形状ですが、アルタスでは全機種でこの形状を採用しています。
ソルダードトーンホール
何年使っても劣化が起こりにくい『金ハンダ』を使用
アルタスのソルダードモデルのトーンホールには、他の部位で使われている銀ハンダではなく金ハンダを使用しております。
従来の銀ハンダでは、長期の使用において睡液等の影響から劣化が起こり、トーンホールと管体の間に隙間が出来てしまうことがありました。
アルタスでは、金が80%の金ハンダを使用することにより、何年使っても接合部の劣化が起こらず、フルート管体の響きの成長をいつまでもサポートします。
管楽器の響きと座金
管本来の響きを引き出す座金形状
フルートの音色を左右する管体の振動は、そこに付随する座金やキイポストからも影響を受けます。
従来あった大きく音孔を迂回する形状の座金ではなく、アルタスでは音孔部分のみを避ける形状の幅広の座金を全機種で採用しています。
この形状の座金は製作の手間はかかりますが、キイからの不要な振動を抑え、管の持つ本来の響きを引き出します。
バネ
優れた弾性をもつ合金『SP-1』を使用したバネ
ハンドメイドモデル(A12)以上のモデルには、SP-1(エスピーワン)バネを使用しています。
SP-1は金10%、銀30%、プラチナ10%、その他数種類の非鉄金属による合金で、バネ材として優れた弾性を持っています。
キイパイプ
耐久性に優れた高純度銀材によるキイパイプ
アルタスフルートの総銀製モデルには、全てのキイパイプにAg997のメタライズドシルバーを採用しております。
ねじれ剛性や耐摩耗性に優れたメタライズドシルバーを用いてキイパイプを製作することにより、全てのキイの剛性、耐久性が飛躍的に向上しました。